測定誤差とは、測定値と真値との差のことです。例えば、本来は500gあるダンベルをはかりに乗せたとき、何らかの影響で500.1gや499.9gになる場合があり、この0.1gの誤差を測定誤差といいます。理想はこのような差がないことですが、測定をおこなうのであれば、誤差と向き合うことは避けては通れません。
この記事では、測定誤差の種類と原因、解消方法などについて解説します。
測定誤差とは?どのような種類がある?
測定誤差は大きく3種類に分けられます。それぞれ発生原因が異なるため、種類によってそれぞれに対策が必要となります。
系統誤差
系統誤差とは、ある特定の原因によって測定値全体が偏ってしまう誤差のことです。測定機器や測定環境、あるいは精度によってその結果が一定の傾向を持つことが特徴です。例えば、端が1mm欠けた定規を使って長さを測定すると、その定規で測定したものは正しい値よりも1mm短く測定されます。
過失誤差
過失誤差とは、作業者のミスや不注意によって人為的に発生する誤差のことです。記入漏れや計算間違い、あるいは測定機器の操作ミスなどがあげられます。例えば、プレス機のショット回数を測定した際、測定者が目を逸らしてしまい正確な回数を数えられなかったような場合に生じます。
偶然誤差(確率誤差)
偶然誤差とは、さまざまな条件が重なってランダムに発生するばらつきのことです。測定するたびに値が変わるため、系統誤差や過失誤差のように原因がはっきりしない場合が多い誤差です。偶然誤差の影響を抑えるには、同じ条件での測定回数を増やし、その結果の平均値と標準偏差値を見出すことが有効です。
測定誤差が発生する原因と影響
続いて、測定誤差が発生する原因と、測定結果にどのような影響を及ぼすのかを解説します。
環境に問題がある
温度や圧力、あるいは湿度などといった環境が測定誤差を発生させることがあります。例えば、測定対象のものが金属でできており、外気温の変化によって体積が変わることなどが挙げられます。場合によっては正しい値から大きく外れた結果になることもあります。
測定機に問題がある
経年劣化や精度が不十分であるなど、測定機に起因して誤差が生じる場合もあります。また、測定機が正常であっても、設定を間違えたり、設置場所が不適切だったりすることで誤差が発生する場合もあるので注意が必要です。
測定者や測定手順に問題がある
測定者のスキル不足や操作の誤りなど、いわゆるヒューマンエラーが測定誤差の原因になることもあります。例えば、測定した際の記入ミスや測定手順のミスなどが挙げられます。
これらの理由で測定値が誤った値になってしまうと、データの再現性や信頼性が低下し、場合によっては最初から測定し直すことになります。
三次元測定機における測定誤差の特性と対策
三次元測定機は高精度な測定ができますが、適切に使用しなければ誤差は発生します。ここでは、三次元測定機における測定誤差の特性とその対策をご紹介します。
三次元測定機特有の測定誤差
測定対象物が複雑な構造である場合、三次元測定機のプローブが接触できず、測定結果に影響を及ぼす場合があります。三次元測定機の操作方法を見直したり、測定条件を一定にしたりすることで、誤差の発生を抑えられます。
JIS規格に基づく誤差評価
三次元測定機の測定誤差は、JIS規格JIS B 7440シリーズ(およびISO 10360シリーズ)を基準に評価されます。
三次元測定機に関係した規格は下記のとおりです。
- ISO 10360-2:長さ測定誤差
- ISO 10360-4:プロービングシステムの誤差
- ISO 10360-7:座標系の誤差
- ISO 10360-12:レーザートラッカーシステムの誤差
三次元測定機の信頼性や精度をこれらの規格で評価し、定期的なメンテナンスを実施すれば、高精度な測定を維持できます。
【要因別】測定誤差を減らす方法
測定誤差の発生を減らすには、原因に応じた対策を取ることが大切です。ここでは3つの方法をご紹介します。
環境に問題がある場合の改善策
測定するための環境を一定に保つことで、環境による誤差の発生を防げます。例えば、測定に使う部屋の温度と圧力を一定にするといった対応です。また対象物も、測定環境下で安定した状態であることを確認してから測定するようにしましょう。
測定機に問題がある場合の改善策
測定用途に合わせた測定機を使うことはもちろん、正確に設置することだけで測定機の問題は改善します。また、部品やセンサーの経年劣化を確認するために定期的なメンテナンス計画を立てることも対策の一つです。
ただし、物理的に正確な設置が難しい場合など調整できない時は、条件に合った測定機に交換することをおすすめします。
測定者や測定手順に問題がある場合の改善策
ノギスなどのアナログ機器を使用する場合、測定者の技量や経験によって測定誤差が出てしまう場合があります。測定者に定期的な訓練を実施し正しい測定方法を身につけさせたり、測定手順を標準化し具体的な作業マニュアルを作成したりすることで改善が見込めます。
しかし、アナログ機器での測定スキルは簡単に均一化できないため、三次元測定機などデジタルの力を使うことも検討しましょう。
東京貿易テクノシステムの高精度測定機の紹介
東京貿易テクノシステム(TTS)では下記のような高精度測定機を取り扱っており、環境や手順など、測定誤差を生じさせる原因についてのご相談も承っております。
Leica Absolute Tracker
Leica Absolute Trackerは、広範囲な領域を高精度に計測できるのが特徴です。マニュアル測定や、ロボットや加工機を使用しての自動計測、ロボットキャリブレーションなどが可能です。また、本体には環境を測定するセンサーがついているため、外部要因に影響を受けずに測定精度が保証できます。
Leica Absolute Tracker AT960|レーザートラッカーの製品紹介はこちら
Leica Absolute Tracker AT500|レーザートラッカーの製品詳細はこちら
Leica Absolute Tracker ATS600|レーザートラッカーの製品詳細はこちら
Absolute Arm
Absolute Armは多関節型三次元測定機です。関節の多さから動きの自由度が高く、測定技術や姿勢に左右されにくいため、誰が測定しても⾼精度を保つことができます。
FLARE
FLAREは工業用品向けの3Dスキャナです。付属のテーブルに対象物を乗せることで簡単に測定できるのが特徴です。手動でおこなっていた測定を自動化できるため、測定者の技量に依存することなく高精度な測定が可能になります。
まとめ
測定誤差を完全に排除することは難しいですが、発生要因を正しく理解し、それぞれに合った対応をすることで、精度を向上させることはできます。
特に、三次元測定機をはじめとする高精度の測定機を使用する場合は、環境、機器、測定者のそれぞれに注意を払い、定期的な教育やメンテナンス、手順の見直しをおこなう必要があります。測定誤差の管理と対策を徹底し、信頼性の高いデータが得られるよう、継続的に改善を進めていきましょう。
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