測定機・ソフト種類別

治具は製造業の現場で欠かせない補助工具であり、作業効率や精度の向上に大きく貢献します。

この記事では、治具の基本的な役割や製造工程ごとに使用されている治具の種類、注意すべきポイントなどについて詳しく解説します。

治具とは?

「治具(じぐ)」とは、加工対象物(ワーク)を固定して正確に位置決めをしたり、効率的に加工したりするために使用する補助工具のことです。英語では「jig」や「fixture」と呼ばれ、同じ読みである「冶具」と表記されるケースもあります。

一般的に治具は、加工対象物や加工内容に応じて専用のものが製作されることが多いです。

治具を使用するメリット

製造工程で治具を使用するメリットを解説します。

作業精度や品質が向上する

治具の最大の利点は、加工対象物や部品をしっかりと固定でき、位置決めがしやすくなることです。この特性により、加工や組立の精度が向上します。

例えば、加工対象物に複数の穴を開ける場合、治具を使用しないと作業者は測定と位置決めを毎回おこなう必要があり、人為的なミスや精度のバラツキが発生しやすくなります。一方、適切に設計された治具を使用すれば、加工対象物を治具にセットするだけで、穴の位置が正確に決まります。さらに、作業者の技能レベルに関わらず常に一定の精度で作業ができるようになります。

結果として、不良品の発生率を大幅に低減でき、製造コストの削減や顧客満足度の向上につながります。また、高精度な作業が可能になることで、より複雑で精密な製品の製造にも対応できるようになるでしょう。

加工にかかる時間を短縮できる

治具のもう一つの大きなメリットは、作業時間の短縮です。

前述したとおり、治具を使用すると位置決めや固定といった準備作業が大幅に簡略化されます。加工対象物を素早く正確にセットできるため、これらの作業にかかる時間を最小限に抑えることが可能です。

さらに、複数の工程を同時におこなえる治具を設計すれば、作業工程の集約も可能になります。例えば、穴あけや切削といった異なる作業ごとに治具を付け替えたり調節したりする手間を減らすことができれば、大幅な時間短縮につながります。

製造工程で使用される治具の種類

続いて、製造工程で使用される治具の種類をご紹介します。

加工工程で使われる治具

加工工程で使われる主な治具は以下のとおりです。

治具の名称 用途や特徴
固定治具
  • 加工対象物を固定し加工を補助する治具
  • 加工時のズレを防ぐことができる
切断治具
  • 加工対象物を所定のサイズに切断する際に使用する治具
  • 目盛りに合わせることで加工対象物を希望のサイズに簡単に切断できる
メッキ治具
  • 加工対象物のメッキ処理(表面に薄い金属膜を作ること)をする際に使用する治具
  • 電気を使ってメッキ処理をおこなう場合は、通電目的で用いられる
挿入・引き抜き治具
  • 加工対象物を所定の位置に挿入もしくはそこから引き抜く際に使用する治具
  • 挿入時は作業者の手にかかる負担を減らすことができ、引き抜き時は垂直に引き抜くことができる
カシメ治具
  • 加工対象物の接合部分を潰して固定する(かしめる)際に使用する治具
  • かしめ作業を効率化できる
塗装治具
  • 加工対象物の塗装を補助する治具
  • 簡単に希望どおりの塗装ができたり、塗りたくない箇所を保護したりすることができる
溶着治具(溶接治具)
  • 加工対象物同士を熱や振動などで接着する際に使用する治具
  • 個人の技術にかかわらず、正確に溶接できる
熱処理治具
  • 熱処理をおこなう際に使用する治具
  • 熱に強く、反りや歪みが出ないように加工対象物の形状で作られている
曲げ治具
  • 加工対象物を曲げるための治具
  • 複雑な形状のものでも特定の形に曲げることができる

組立工程で使われる治具

続いて、組立工程で使われる主な治具をご紹介します。

治具の名称 用途や特徴
組立治具
  • 加工対象物の組立作業をおこなう際に使用する治具
  • 部品をセットするだけでズレを抑制し、正しく効率よく組み立てられる

検査・測定工程で使われる治具

最後に、検査・測定工程で使われる主な治具をご紹介します。

治具の名称 用途や特徴
測定治具
  • 測定機を使用して加工対象物の寸法や質量、電流値などを測定する際に使用する治具
  • 測定時のズレを抑えることができ、測定機にかかる工数の削減につながる
検査治具
  • 加工対象物の寸法や形状が基準を満たしているかチェックするための治具
  • 検査対象をセットするだけで判定できるものもあり、ミスなく効率的に検査できる

治具を製作する際に知っておきたいポイント

治具を製作する際には、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

使用する工程や目的を明確する

治具製作で重要なポイントの一つは、その治具がどの工程で使用され、何を達成するためのものかを明確にすることです。

例えば、「切削加工工程で使用し、工作物を0.01ミリメートル以内の精度で切断する」といった具体的な目標を設定します。そうすることで、必要な機能や求められる精度が明確になり、適切に治具を設計できます。

位置決めとクランプの設計をおこなう

位置決めとクランプも治具設計で重要な要素の一つとして挙げられます。

治具製作における位置決めとは、加工対象物を所定の位置へ配置することを指します。またクランプとは、加工対象物が作業時にズレることがないよう固定することを指します。

例えば、金属板に精密な穴あけ加工をおこなう場合、位置決めが正確でないと、穴の位置がズレ、精度に大きな影響を及ぼします。製品の品質低下や後工程での組み立て不良につながる可能性が高まり、最悪の場合、スケジュールの遅れに発展します。

また、旋盤で金属棒を加工する際、クランプが不十分だと、高速回転中に加工対象物が外れて飛び出すおそれがあり危険です。製品の製作に影響が出るだけでなく、事故やケガにつながる可能性があります。

こうしたリスクを軽減するためにも、治具を製作する段階で正確な位置決めやクランプが可能な構造設計か、加工対象物と適合するかを確認しておきましょう。

平面度・平行度・直角度を調整する

治具製作における平面度とは、基準となる面や線に対してどれだけ理想的な平面に近いかを示す指標のことです。また平行度とは、基準となる面や線に対してどれだけ平行に近いかを示す指標、直角度は基準となる面や線に対してどれだけ直角に近いかを示す指標です。

治具の設計・製作において、平面度・平行度・直角度の調整も重要な要素といえます。なぜなら、これらの要素は治具の精度を左右し、ひいては製品の品質に直接影響を与えるためです。

例えば、エンジン部品の加工では、シリンダーの平行度や直角度が要求精度を満たしていないと、エンジンの性能や耐久性に悪影響を及ぼす可能性があります。また、精密機器の筐体(きょうたい)製作においては、各面の平面度や直角度が不適切だと部品同士が正しく合わず、製品の機能や外観に問題が生じる可能性があります。

平面度・平行度・直角度が適切に調整された治具を使用すれば、製品の寸法精度や形状精度を高いレベルで維持できます。また、部品同士の平行度や直角度が適切に保たれていれば、組立作業がスムーズにおこなえるようになり、組立時間の短縮や不良品の発生率低減にもつなげられます。

安全性や使いやすさを考慮する

治具の設計において安全性と使いやすさを考慮することも重要です。
使いやすい治具であれば、作業者の習熟時間を短縮すると同時に作業速度や加工ミスを低減し、品質の向上にもつながります。また、安全に利用できる治具であれば、事故による作業者への危険性も低くなるでしょう。

そのほか、各治具に対してラベリングをおこなうことも治具の使いやすさにつながります。治具は形や色が似通っているものも多いため、ラベリングにより管理がしやすくなるだけでなく、作業者の誤用防止にもつながります。

治具を製作する際の注意点

次に、治具を製作する際の注意点を3つご紹介します。

コストと生産量のバランス

治具の製作には工数と費用がかかるため、生産量とのバランスを慎重に検討する必要があります。

特に小ロット生産の場合は、治具の製作費用が製品原価に大きな影響を与える可能性があります。例えば、100個の製品を生産するために100万円の治具を製作したとすると、1製品あたりの治具コストは単純計算で1万円となります。

そうしたことを避けるため、生産量に応じて以下のような対策を検討しましょう。

小ロット生産の場合大量生産の場合
汎用性の高い治具を設計し、複数の製造工程で使用できるようにする耐久性の高い専用治具を製作し、長期的なコスト削減を図る

上記の対策はあくまで一例です。製作する製品や企業方針などによってより適切な対策を打ち出しましょう。

スケジュール管理

治具の製作には設計、材料調達、加工、組立、調整など多くの工程があり、各工程でのトラブルが全体の遅れにつながる可能性があります。
また、治具の納期遅れは製造工程全体に影響を及ぼすため、綿密なスケジュール管理が不可欠です。全体のスケジュールから逆算して余裕を持って治具製作をおこないましょう。

治具の管理とメンテナンス

部品や製品の種類が多いと管理する治具の数も膨大になり、その管理とメンテナンスが課題となります。

治具は種類が多岐にわたるため管理も大変ですが、適切な管理・メンテナンスを怠ると、治具の劣化や紛失により、製造品質の低下や生産効率の悪化を招く可能性があります。製造工程のスケジュールに影響が出ないよう、日頃から定期点検やメンテナンスを欠かさないようにしましょう。

治具の製作にかかる負担を軽減するには?

これまで治具の製作においては、現物の試作品を作り、その出来をチェックしてさらに品質を高めるといったトライアンドエラーが必須でした。しかし、このやり方では多くの工数と製作コストがかかってしまい、企業にとっては大きな負担となります。
また、さまざまな治具を製造工程で取り扱う場合、管理も負担になるでしょう。

そこで、こうした治具の製作や管理の負担を軽減したい方に向けて、東京貿易テクノシステムの「REGALIS Fusion」をご紹介します。

「REGALIS Fusion」は、デジタルデータを活用してバーチャル検証をおこなう計測DXソリューションです。設計値もとに作成したシミュレーションモデルに現物の測定データを反映させることで予測精度を高めます。

また、現物の検査治具をバーチャルの検査治具に置き換えることで、現物の治具を作る時間やコスト、保管場所などの課題解決を実現します。

REGALIS Fusionについて、詳しくは以下のページをご覧ください。

REGALIS Fusion製品詳細ページ

まとめ

治具は、効果的に用いることで製造工程の効率化や製品の品質向上に寄与します。
一方、治具製作の段階で用途が明確に決まっていなかったり、精度に問題があったりすると、製造工程で重大な遅れやミスが発生する可能性があります。

効率良く精度の高い検査治具の製作をおこないたいとお考えの際は、ぜひ東京貿易テクノシステムの「REGALIS Fusion」をご活用ください。

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