現在、国内の道路橋は約70万橋あり、建設後50年を経過する老朽橋が4割以上、10年後には6割以上になると見込まれています。このような橋梁の寿命を延ばし、安全な橋梁を供用するために、適切な点検と予防保全的な補修・補強は必要不可欠です。また、日本国内で起きたいくつかの大震災により浮き彫りになった橋梁の老朽化対策、中でも橋脚耐震補強工事は急務となっています。

橋脚耐震補強工事には様々な工法がありますが、「鋼板巻き立て工法」(以下、鋼板巻き)は、既設の鉄筋コンクリート橋脚に補強鋼板を巻き立て、橋脚の曲げ耐力、せん断耐力およびじん性の向上を図る工法です。現在の鋼板巻き工事は手計測で実施しており、次のような課題があります。

通常の工事の流れ(例)

課題

  • 1.工期に余裕がない
    受注して橋脚を手計測するまでの間に*88申請及び足場組立が必要になるため、鋼板発注が遅くなります。また、鋼板の納期が半年程度かかるため、橋脚の施工開始が遅くなり、工事期間が非常にタイトとなってしまいます(橋梁ごとに引渡期間が定められているため)。
  • 2.材料費が高くなる
    無収縮グラウト等の材料費は高額なため、鋼板巻きの厚みを適正化したいところです。しかし、現状は手計測の数値から割付(設計)しているため、適正より厚く施工しており、余分な厚み分の材料費が嵩んでしまいます。また、工事によっては無収縮グラウト代の追加費用を発注者が負担することもありますが、工事により負担してもらえないケースもあります。
  • 3.デジタル管理ができない
    現状の手計測では、データのデジタル管理ができません。
  • 現在、国土交通省が推進している *i-Construction(アイコンストラクション)を実現するにデジタル化は避けて通れない課題です。いかに手計測からデジタル管理ができる計測方法にプロセスチェンジし、効率化を図れるかが重要なポイントとなります。

*88申請:労働安全衛生法88条のことで、「高さが10m以上の構造」の足場で組立から解体までの期間が60日以上の場合は労働基準監督署への事前申請が必要

*i-Construction:2016年より、国土交通省にて始動した「建設現場にICT(情報通信技術)を活用しようとする取り組み」

ソリューション

現場でリアルタイム解析が可能なLeicaレーザートラッカーATS600を用いることで、鋼板巻き工事の効率化を実現します。

1. 現場で素早く設置

現場に設置してから電源投入後、自動で準備が完了し、わずか約3分で計測開始が可能です。
また、どのような態勢でも計測が可能なため、水平出しの必要がありません。

2. 高精度3次元計測・高品質データ

高精度なスキャニング計測、リフレクター計測、短点計測が可能です。

1. スキャニング計測(多点計測)

計測レンジ
1.5m~60m
計測精度:±0.3mm
(精度保証30mまで入射角45°まで)

2. リフレクター計測

計測レンジ
0.8m~80m
計測精度:±15μm+6μm/m

3. 単点計測

計測レンジ
0.8m~80m
計測精度:±15μm+6μm/m

一般的なTLS(地上型レーザースキャナー)は本体から
の距離によって点間ピッチ(点群密度)が増減するため、
本体に近づくほど高密度になります。
ATS600を使用すると、トラッカー本体からの距離に
関係なく、均一な点間ピッチでデータ取得が可能なため、
高品質なデータを提供します。

3. リアルタイム解析が可能

計測後、現場ですぐに解析でき、比較対象物とのカラーマップ(コンター図)を表示できるため、無収縮グラウトが適正な厚みであることをその場で確認することができます。

システム構成(提案例)

ATS600に関する製品情報はこちらをご確認ください

計測作業フロー(例

解析結果

奥村組土木興業殿事例

効果

30m程度の橋脚では、次のような効果が見込めます。

  • 1. 受注後の、88申請を行う前に計測が可能
  • 2. 足場を組む前の計測が可能なので、工期に余裕がでる
  • 3. 計測後にCAD化、割付(設計)で1週間かからない
  • 4. 1脚あたり足場レンタル料40~50万削減
  • 5. 1脚あたり58日の工期短縮と人件費(3名)削減 ※工事内容により工期・人件費は増減します。
  • 6. 適正厚みでの鋼板巻きが可能になり、材料費の削減
    例:大型橋脚(外周60m、高さ30m)を厚さ5センチから4センチで施工できれば、1500万程度の材料費削減が見込める。
    (無収縮グラウト:1000リットル120万程度)

このように、高精度でリアルタイム解析が可能なATS600を使用することで、工事全体のプロセスを見直し、橋梁計測と鋼板発注のタイミングを前倒しできることで、大幅な工期短縮およびコスト削減が可能になります。ムリ・ムダをなくすと同時に鋼板巻き工事の品質向上を目指せます。

建設業界におけるアイコンストラクション推進により、ATS600の用途は今後も更なる広がりを見せています。ATS600の更なる可能性が期待できます。

詳細につきましてはお気軽にお問合せください。弊社ではご提案できるソリューションを多数用意しております。
ぜひ、お困りごとをお聞かせください!

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