2016年より、国土交通省にて「建設現場にICT(情報通信技術)を活用しようとする取り組み」が始動しました。この取り組みはi-construction(アイコンストラクション)と呼ばれ、情報化を前提とした新基準が盛り込まれています。以降、建設現場の土木工事における様々な工種の基準化が拡充されてきました。

2017年にはICT舗装工がルール化され、道路を新設する際は以下のプロセスで舗装工事を実施することが定められました。各層で出来形計測と記載されていますが、最後のプロセスのアスファルト表層のみ厚さ計測が必須で、それ以外は任意となっています。

出典:「ICT舗装工について」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/common/001174971.pdf

ICT舗装工では、全層で出来形計測をしたほうが良いですが、本ルールでは最終工程のアスファルト表層の出来形計測のみが必須となりました。
また、TLSに要求される性能として、「出来形の点密度は10cm x 10cmあたり1点以上が必要」且つ「要求精度は計測範囲内で±4mm以内」と定められており、この要件を満たすのにも従来のTLSには課題がありました。

TLS(Terrestrial Laser Scanner):地上型レーザースキャナー

課題

従来のTLSでは以下の計測課題があり、最終工程のアスファルト表層のみの計測しか実現できませんでした。

TLSによる出来形計測の課題
  • 1. TLS本体からの距離によって点群密度が増減する
    ・TLS本体から遠くなると測定点間の距離が増加
    ・最大測定距離で所定の点群密度を確保すると、TLS本体に近づくほど点群密度が過密になる
     例えば、40m先の点間距離を10cm x 10cmあたり1点以上入れようとすると、近くの点間距離が過密になり、データ量が膨大となります
  • 2. 計測対象エリア外のデータも含まれるため、処理する点群データの量が膨大
    TLSは測定エリアの範囲指定ができず、対象である道路以外の部分もデータを拾ってしまうため、データ量は膨大となります。データ量が多ければ、解析にも膨大な時間を要してしまいます。
    データ解析中(数時間~1日程度)は工事を止めなければなりません。また、通常は事務所に戻って解析を実施しますが、解析後のデータに抜けがある場合は、現場に戻って計測し直しが必要で、手戻りが発生します。
  • 3. 黒色・光沢物や水平面の計測が苦手
    特に新設アスファルトは黒光りしているため、レーザーは反射し難くデータに抜けが発生してしまいます。また、三脚にTLSを設置しても計測するための角度が足りない為、本体から遠く離れた測定は厳しいのが現状です。

本来であれば、全層で厚み計測をし、リアルタイムで解析してすぐに修正することで品質向上に繋げられますが、このような課題があり実現不可能でした。

従来の方法からプロセスチェンジをし、いかに建設現場でリアルタイム解析し、すぐに修正を可能にすることで手戻りを無くすかが重要なポイントとなります。

ソリューション

国土交通省の定める計測要件を十分に満たす機能を持ち、現場でリアルタイム解析が可能なLeicaレーザートラッカーATS600を用いることで、計測の手戻りを無くすだけでなく、全層での出来形計測を可能にし、舗装工の品質向上を実現します。

1. 計測の範囲指定と均一の点間距離でデータの軽量化 → リアルタイム解析の実現

計測の範囲指定ができないTLSは、道路以外のすべてデータも拾ってしまいます。また、本体から離れた場所の点間距離の要求仕様に合わせると近い距離では点群密度が濃くなり、膨大なデータ量となるため、解析に数時間~1日程度掛かります。解析中は工事を止める必要があるため、各層での出来形計測はできません。

ATS600を使用すると、計測の範囲指定ができるため、対象となる道路のみを指定してデータ取得が可能です。また、任意の点間距離を指定して計測できるため、トラッカー本体からの距離に関係なく均一な点間距離でデータ取得が可能です。不要なデータを取得しないため、データの軽量化に繋がります。
これにより、現場でリアルタイム解析し、その場で修正箇所の確認ができるため、工事を止める必要がありません。

2. 高精度計測による高品質データ

LeicaレーザートラッカーATS600は、国土交通省が定めるTLSの性能要件である「出来形の点密度は10cm x 10cmあたり1点以上が必要」および「要求精度は計測範囲内で±4mm以内」を満たし、安定した高精度計測を提供します。

1.スキャニング計測

計測レンジ
1.5m~60m
計測精度:±0.3mm
(精度保証30mまで 入射角45°まで)

2. リフレクタ計測

計測レンジ
0.8m~80m
計測精度:±15μm+6μm/m

特に、黒物・光沢物や水平面計測にも強いため、抜けのない高品質なデータを提供します。水平面計測については、スキャニング計測時の精度保証は30mまで入射角45°までですが、実際にトラッカー本体を床面から1mの高さに設置し、60m離れた箇所のスキャンニング計測とリフレクター計測の誤差は1mm以下という検証結果も得られました。

このことからもATS600は国土交通省が定める性能要件を十分に満たすソリューションをご提供します。

システム構成(提案例)

ATS600に関する製品情報はこちらをご確認ください

まとめ

このように、高精度なATS600によって軽量化された高品質データを扱えるようになることで、従来の大型TLSの解析時間を約5分の1に短縮することができます。高速解析により、工事を止めずに現場でリアルタイム解析が可能になるため、計測が不十分だった箇所の確認と修正がその場ですぐに可能となります。つまりこれまで多大な時間を要していた手戻りを無くすことができます。

これまで不可能であったICT舗装工の全層での出来型管理の可能性が広がり、品質向上を目指せます。
建設業界におけるアイコンストラクション推進により、ATS600の用途は今後も更なる広がりを見せています。ATS600の更なる可能性が期待できます。

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