自動車製造における治工具の役割と現状の課題
自動車製造において、治工具は製造プロセスの中で極めて重要な役割を果たします。治工具とは、部品の固定や位置決め、加工を補助するための専用の工具や装置を指し、車両を正確に搬送するための搬送治具、ボディパネルの位置を決定する位置決め治具、部品の組み立てや検査に使用される組立治具や検査治具などが挙げられます。
これらの治工具が正確に機能することで、製品の品質と生産効率が保たれていますが、従来の管理手法では手作業や経験に依存する部分が大きく、作業のばらつきや効率の低下が課題となっています。
治工具の中でも自動車製造ラインにおける搬送治具は、車両や部品の正確な位置決めと搬送を行うために不可欠な装置です。しかし、従来の搬送治具の調整は、熟練者の技術に依存しており、手作業で行われることが多く、そのため作業に時間がかかるだけでなく、再現性に乏しい場合があります。特に、新車種のライン立ち上げや既存ラインの保守においては、搬送治具の調整がうまくいかないと、製造ライン全体の効率が低下し、生産に遅延をもたらす可能性があります。
このため、搬送治具においても、より正確かつ効率的な調整手法の導入が急務となっています。
課題
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- 属人化された作業
従来の手測定による調整方法では、作業者の経験や勘に依存しているため、調整の精度や再現性にばらつきが生じることがあります。 - 可搬性の問題
既存のアーム式やカメラ式の3Dスキャナは可搬性が低く、生産ライン内での迅速な計測が困難であるため、作業効率が低下します。 - 作業の非効率性
実車を用いた確認が必要であり、特に車両と治具の干渉の有無を確認する作業は具体的な指標がなく、そのため、何度も調整と確認を繰り返す必要があります。
特に近年では生産準備期間の短縮と効率化が進む中で、以下の課題を抱えている従来の搬送治具の調整手法では対応が難しくなってきています。
- 属人化された作業
ソリューション
AQROS-Scanによる搬送治具の精密調整で生産効率と品質向上を実現
AQROS-Scanの高速スキャン(3,000,000点/秒)とWi-Fi&バッテリーユニット(ケーブルレス)により、生産ラインの停止期間中でも短時間で正確な搬送治具の調整が可能となります。さらに3Dデータを活用することで、生産ライン外でも事前に車両や部品と治具の干渉確認を行うことができ、生産ライン停止時間の大幅な短縮が期待できます。
これにより、搬送治具の調整作業が効率化され、生産ライン全体の稼働率が向上し、生産効率が大きく改善されます。
➢AQROS-Scanとは
TTSが提供するハンドヘルド型の高精度3Dスキャナです。
対象物にレーザーを照射し、その反射光をカメラで受光して3D形状データを取得します。
位置合わせにターゲットマーカーを利用することで、スキャナーや対象物の動きがあっても精度の高いスキャニングが可能です。
また、ダイナミックリファレンス機能※を搭載し、振動のある環境でも精密な3Dスキャニングが可能です。
※対象物やスキャナ自体が動いている状態でも対象物との相対位置をリアルタイムで追跡・補正する機能
AQROS-Scanの強み
FreeBox※を活用することで、スキャンデータを無線でソフトウェアに転送します。
これにより、PCとスキャナ間の通信ケーブルが不要となり、可搬性と自由度が向上します。
その結果、環境の制約を受けにくくなり、生産ライン内での検査業務が容易になります。
※Wi-Fi&バッテリーユニット
- 通信ケーブル(有線)の課題
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- 作業性
物理的制約により作業の自由度が制限され、スキャナーの取り回しが不便になります。さらに、スキャン中にケーブルが測定対象物や周囲の設備等に引っかかるリスクがあります。
- コスト面
通信ケーブルが摩耗や断線することで故障のリスクが増加します。 これにより、予期せぬダウンタイムや修理コストが発生する可能性があります。
- 作業性
効果
AQROS-Scanを導入することで搬送治具の調整作業における生産ラインの停止時間を短縮し、総合的な生産効率の向上が期待できます。
参考例)某自動車メーカー様の生産ライン内搬送治具の調整作業時間
また、AQROS-Scanはその操作の容易さから直感的に使用することができ、測定者の習熟度に依存しません。これにより治工具全般における調整のばらつきを低減し、作業者のカン・コツに依存しない高精度かつ高品質な作業を実現します。
詳細につきましてはお気軽にお問合せください。弊社ではご提案できるソリューションを多数用意しております。ぜひ、お困りごとをお聞かせください.
システム構成(提案例)
AQROS-Scanに関する製品情報はこちらをご確認ください。