多関節アーム型3D測定機

新車のエクステリア・メッキも下準備なしで即測定
アーム型三次元測定機+有接触プローブを活用し
「東京オートサロン2023」SUV部門で優秀賞を受賞

株式会社マツモト自動車は、1968年に創業した自動車のエアロパーツ&アフターパーツメーカーです。自社ブランド「M’z SPEED(エムズスピード)」は大阪府東大阪市に本店を置き、直営店のほか仙台から福岡まで6店舗のフランチャイズ店を展開。自社工場も備えてオーダーに対応しています。

扱うメーカーは、トヨタ・ホンダ・日産などの日本車はもちろん、アウディ・BMW・キャデラックなどの外車まで幅広く、手掛けるアイテムはエアロパーツのほかアルミホイール・サスペンション・マフラー・内装品など多種多様。これらのパーツは全て自社でデザインし、設計・製造・販売までを行っています。

測定から開発、実装まで

パーツメーカーとしては、各社から新車が出たらすぐ「これをカスタマイズしたい」と思うお客様に向けて開発を始めなければいけません。そこで欠かせないのが、効率的な実車測定と測定結果の3Dデータ化です。

マツモト自動車では以前から3D CADによるデザイン開発を行っており、測定機の重要性は社内でも共有されていました。長年使っていた測定機に代えて2022年9月に導入いただいたのが、東京貿易テクノシステムのアーム型三次元測定機「VECTORON」と計測・解析ソフトウェア「3D-Magic REGALIS」です。

導入直後に開発したトヨタ新型「クラウン・クロスオーバー」のフルカスタム車は、「東京オートサロン2023」の来場者投票によってSUV部門優秀賞に選ばれました。今回は当社の「VECTORON」がどのように役立ったのか、詳しくお話を伺いました。

SUV部門優秀賞を受賞された「クラウン・クロスオーバー」のフルカスタム車

課題
  • 7年間使っていた他社の測定機のエラーが増えた
  • 自動車のメッキ部分や下回りの測定が難しい上、準備に時間がかかった
  • 測定後も前処理スプレーや参照点シールの片付けに時間を取られた
解決
  • アーム型三次元測定機に替えてエラーは減り、装置の取り回しが楽になった
  • 自動車の移動やリフトアップが不要、その場ですぐに測定できる
  • 下準備がなくなったため半日以上かかった「測定後の片付け」が不要に

情報システム部 門田さん・中井さん

3D CADによる設計を行うために実車をくまなく測定、作成した3Dデータから社長の松本徹さんとデザインを起案。さらにその形状を3Dの設計データとして落とし込む業務を行っている。国内外メーカーの新車に対応し、年12〜3台を測定している。

広い面を精密に測定できる機種を探していた

「東京オートサロン2023」SUV部門での優秀賞受賞、おめでとうございます。今回のパーツ開発でも2022年9月導入の「VECTORON」が使われていますか。

はい、そうですね。導入直後は手元の実車を使いながら「VECTORON」と「3D-Magic REGALIS」の操作を教わりました。自分たちだけで測定・データ作成を行ったのはこのトヨタ新型「クラウン・クロスオーバー」のパーツ開発からです。その車でまた賞をいただくことができて安心しています。

弊社では長年3D CADデザインでの開発を重視してきました。同業他社ではクレイを使ったり一部3Dデータを使ったりしていると思いますが、弊社のように完全な3Dデータ上で開発を進められるメーカーは少ないのではないでしょうか。以前から三次元測定機は活用していたのですが導入から7年経ってエラーが出やすくなり、新しい測定機を探しているところで「VECTORON」を知りました。

「VECTORON」を知ったきっかけは何でしたか?

実は、東京貿易テクノシステムの営業の方が私たちの「M’z SPEED」のファンということで「東京オートサロン2020」で声をかけてくださったんです。「こんな測定機を販売している」という話を社長の松本としていて、ちょうど情報システム部としても新しい測定機を検討していた時期だったので相談に乗ってもらいました。

前機種を使っていた7年の間も、何度か候補を探してはみたんです。以前の測定機は、レーザーが照射できない陰はデータが取れないのが弱点でした。それならとハンディ型を試したこともありましたが、ボディのような広い面を測定するとブレが大きくなってしまう。やっぱりアーム型がいいと感じたので「VECTORON」はとても気になりました。

コロナ禍もあって、店舗で実際にデモを見ることができたのは2022年2月です。スズキ「ジムニー」を使った測定で「すごい」と思いましたね。

「下準備と片付けが全くいらない」という衝撃

具体的にはどんな点に惹かれましたか?

まず、メッキ部分をそのまま撮影できる点です。

最近の車はきらびやかなデザインのパーツが増えていますが、以前の測定機だと測定しようとすると反射して撮影できません。だから事前に反射防止スプレーを吹き付けたり、参照点となるシールを貼ったりするのですが、終わったらきれいに洗車して戻す必要があります。

シールは100枚くらい貼るので、剥がすにも手間がかかります。シール跡やスプレーを残さないように洗車するのは半日がかりです。情報システム部は測定とデータ化が主な業務ですが、測定自体に6〜7時間かかり、段取り・後片付け・洗車も私たちの仕事になっていました。

でも「VECTORON」はメッキ部分をそのまま撮影して、1回できちんとデータが取れる。「下準備と片付けが全くなくなる」というのは衝撃でしたね。「今までのこれをやらなくていいのか」と。測定は4〜5時間なので、それ以外の時間が有効に使えるようになりました。

第2に惹かれたのが、取り回しの良さです。

パーツ開発にとってエクステリア、特に下回り形状のスキャンは必須です。でも以前使用していた測定機だと焦点距離が長く、データを取るには車を1mほどリフトアップしないといけません。アーム自体も大きくて運ぶのに時間がかかり、結局、車の下にアームが入らないこともありました。

「VECTORON」の場合はそのままの車高でアームが入ります。車を移動させる必要もない。それに部品の裏の爪形状など、私たちが欲しい細かな形状もきちんとスキャンしてくれる。デモを見て使いやすさがよく分かりました。

第3に、有接触プローブが併用できる点です。

アルミホイールの測定では有接触プローブを使い、要素測定から円を描いてホイールデータにすることができます。非接触で大きく面データを取りたいときと、有接触で幾何要素データを取りたいときと、必要に応じて使い分けられるのは私たちの用途に合っています。

導入前に「VECTORON」と比較した機種はありましたか?

はい、もう1社のアーム型測定機が候補に挙がっていました。双方よくできていて性能も高く、私たちが求める0.1mm単位の精度もクリアしていました。それでも最終的に「VECTORON」を選んだのは製品が国産だったからです。

もう1社の製品は海外製で、何か故障した際は本国から部品を取り寄せるという話でした。前機種も故障した際はカメラ交換で3週間〜1カ月かかっていて、その間はスキャン作業ができずにいました。

でも「VECTORON」なら何かあったときに連絡するとすぐに対応してもらえます。東京貿易テクノシステムの営業担当者さんも導入前から「お困りごとはありますか」と頻繁に来られていて、運用面で非常に安心できると感じました。この安心感はかなり大きいですね。

スペック+営業担当者の人的フォローが心強い

導入後も営業担当者からのフォローはありますか?

はい、導入後は3日間のトレーニング期間を設けて、実車を使って操作方法を教えてもらいました。トレーニングの目標は「自分たちで必要なスキャンとデータ加工を行い、3D CADへデータを渡せるようになること」。3D CADで設計するためにはデータの位置合わせを行い、車体全体のデータからパーツデータを切り出す必要があります。3日間でそこまで習得できるようカリキュラムを組んでもらいました。

初日は「分からないことしかない」状態で、「どうやって起動するか、アームはどうつなぐのか、ソフトで何ができるのか」からスタートしました。でも3日間のトレーニングで基本的なデータ加工まで可能になり、その後、自分たちだけで測定して開発・設計へつなげた1台目がトヨタ新型「クラウン・クロスオーバー」です。

確かに多関節アームの動かし方は慣れがいると思います。車のボディ全体のデータを取るときは測定したエリアをつなげないといけないんですが、画面ばかり見てしまうと手元の測定が甘くなってしまう場合がある。

でも営業担当者さんはいつも私たちの使い方を見ていて「こうするといいですよ」というアドバイスをくれるのでありがたいです。ボディ全体の測定については、アームの動かし方だけでなく「ソフトの新機能を使う事で、これまでよりも簡単にデータを繋ぐことが出来る」というポイントを教えてもらい、実際に作業がとても楽になりました。フォローのきめがとても細かいんです。

弊社では他にもいろいろな精密機械を使っていますが、その中でも東京貿易テクノシステムの営業担当者さんはとてもこまめに訪問して困りごとを聞いてくれるので助かります。

「VECTORON」を導入してのメリットは?

一番大きいのは、測定の下準備と片付けをしなくてすむようになったことです。新車が納入されたら「VECTORON」を使えばその日のうちに測定が終わり、デザイン前のデータ加工は1日か2日あれば終わります。

前は、測定の翌日は洗車していましたからね。片付けに使っていた時間はそのままデザイン開発へ回せるようになって、製品販売までの日程がずいぶん短縮されました。新車が出た後はどのパーツメーカーもなるべく早く新商品を出そうとするので、その中でもいち早くスタートが切れるようになっています。

近年は、自動車メーカーのデザインも意匠を凝らした細かなものが増えています。私たちパーツメーカーはそのデザインに合わせ、いかにカッコいいドレスアップを提供できるかが勝負です。効率的で精密な測定ができる「VECTORON」とそのサポートをしてくれる東京貿易システムは、これからも良いパートナーであり続けると思います。

株式会社マツモト自動車様

1968年に創業し、自動車用エアロパーツ&アフターパーツメーカー「M’z SPEED(エムズスピード)」を全国に展開。直営店とフランチャイズ店のほか、自社工場を備えてオーダーに対応している。長年3D CADデザインによる製品開発を行っており、「東京オートサロン2023」ではトヨタ新型「クラウン・クロスオーバー」のフルカスタム車がSUV部門優秀賞を受賞。お客様にもそのデザイン性と技術力を惜しみなく提供している。

https://www.mzspeed.co.jp/

【この事例で紹介された製品】VECTORON

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