カメラ式非接触3Dスキャナ

・鋳造用金型のほか砂型や治具も測定
・不具合の正確な原因が特定でき、修正コストが大幅減
・新型の非接触3次元測定機では測定時間が半分に

愛知県豊田市に本社を置くアイシン高丘株式会社は、トヨタグループの自動車部品メーカーとして、1960年に設立されました。主にエンジン系・駆動系・ブレーキ系・ボディ系などの自動車のあらゆる箇所の複雑な部品の鋳造・機械加工を手がけ、塑性製品の製造や「TAOC」音響機器の製造・販売も行っています。

1988年にアメリカに拠点を設立して以来、インドネシア、タイ、中国、インド、メキシコと世界各国へ次々と進出。国内工場と同等の高品質な部品製造を進めて、現地で展開する自動車メーカーや部品メーカーから高く評価されています。

自動車ならではの厳しい安全基準や寸法精度、納期短縮などが求められる現場で活躍しているのが、東京貿易テクノシステムの非接触3次元測定機「COMET」と形状・寸法検査ソフト「PolyWorks」です。鋳造金型のほか、砂型、中空部を作るための中子などを測定して3次元データを取得、設計との差異や試作・量産時の不具合箇所を検査しています。

2009年本社導入後の早い段階で「この測定性能と精度は製造プロセスに不可欠」と判断し、国内のみならず海外で工場を設立する際にも必ず拠点に1台は導入しているといいます。新機種発売後は徐々に入れ替えを進め、測定時間の半減、設置面積の縮小化など新しい効果も出ています。

現在国内外で10台以上のCOMETシリーズを活用するメリットについて、これまで社内導入を進めてきたご担当者に詳しくお話を伺いました。

鋳造生技部 鋳造生産準備G DEチーム SL 大岩隆司さん

新製品の金型が設計とマッチしているか、また生産工程で利用している金型がどれくらい摩耗しているかなど、寸法に影響する要素について常に測定・分析・評価を行い、現場につなげて高精度の製品作りに生かしている。

品質管理の工程が大幅改善、海外拠点でも必ず導入

御社では高精度が求められる自動車部品の製造を行っています。非接触3次元測定機はどんな場面で使用していますか。

大岩隆司さん(以下、大岩):弊社の主力である鋳造製品の工程は、金型から砂型さらに素材(鋳物)へ転写し、更に加工と形状変化がありますので、これら全てが測定対象となります。

工程の形状変化を3次元データで正確に把握できれば「どこを修正すればよいか」がすぐわかるので、この測定機が活躍しています。新しい金型や砂型のほか、すでに量産工程で使っているものについても一定のショット数を超えた時点で定期測定を行い、不具合を未然に防いでいます。 

海外拠点でも利用しているとお聞きしました。今はCOMETシリーズを何台導入されているのでしょうか。

大岩:現在、国内では愛知県豊田市の本社に2台、吉良工場に1台、九州・富山・東北にある子会社に各1台導入しています。海外拠点でも鋳造をやっているところはすべて入れていて、中国で2台、アメリカ、インド、タイ、メキシコで各1台が稼働しています。

もともとは2009年に本社で1台導入したのが始まりです。製品完成後の寸法調査はそれまで有接触の測定機で行っていましたが、部品ごとにプログラムを組んで測定していたため非常に時間がかかりました。また、測定後は1品番ずつ大きな図面に数値を転記しなければいけません。

金型全体の面評価による不具合の抽出や素材等の測定リードタイム短縮等の目的のために導入したのが、非接触3次元測定機「COMET」でした。

導入後は、金型測定が1日で終わったり、図面の数値だけで判断を求められていた場面でもカラーマップ化によって一目で歪みの箇所と度合いがわかったり、測定も分析も精度を上げながら時間短縮する効率化が実現しました。有接触測定を行っていたメンバーは手が空くので、別の業務へ集中することもできます。

成形品を試しに測定しようという用途でも気軽に使えてその日のうちにざっくりと出来栄えがわかるので、生産準備部門にとっても非常に仕事が楽になりました。

検査・分析のサイクルが圧倒的に早まり、品質管理プロセスが改善されていくのを目の当たりにしたので、当時本社にいた役員はみんな「鋳造に絶対必要なツール」と判断しました。彼らが新拠点で責任者になるときは「導入が必須だ」と判断されるようになりました。海外を含めて10台以上導入しているのはこんな理由からです。

親会社のアイシン精機もこの装置には信頼を置いていて、海外で稼働しているのを見た幹部が「他の関連会社もこのようにしっかり金型を管理しなければ」と評価したと聞いています。これからも国内外にかかわらず新工場立ち上げの際はセットで導入するつもりです。

ビジュアルでポリゴンデータを示せる検査ソフト「PolyWorks」の役割も大きいですね。

大岩:従来の寸法測定では金型に関してもメーカーが点でデータを出していました。しかし山ほどある数字を見ても「それが歪みなく生成されているのか」はいまいちよくわかりません。結局「これくらいかな」という技術者の感覚によって修正を行い、またズレが見つかって金型を作り直すような工程が頻発していました。

PolyWorksで解析すると全体図がカラーマップ化されるので、「この色がダメ」と教えれば新入社員でもパッと見て「真っすぐか、凹んでいるのか、どこの寸法が悪いのか」を判断できます。また、従来の方法で測定した点と点の間に歪みが発生していたとしても、3次元データなら全体を面で捉えられるので見落としがありません。直感的にわかるのは対策を考えやすくて良いと思います。

以前、新規部品製作の際、初期評価の数ロットについて部品全部のカラーマップを作って提出したところ、メーカー担当者から「今までで一番見やすくわかりやすかった」とお褒めの言葉をいただきました。別の製品でも加工責任者の方にも「これはわかりやすい」と評価していただき、それ以降、初期評価ではこの方法を採っています。

周辺ツールの基準値を測定、今後の修正工程に生かす

そのほかに導入したメリットを感じるときはありますか。

大岩:鋳造用の金型や砂型のほか、工程で使うツールやピンなども測定しています。製品の寸法が悪いとつい「金型が悪い」と考えがちなのですが、果たして本当にそうなのか確かめる意図もありました。

すると、金型が狙い通りにできていたとしても、砂型を作るときの砂の成分や圧力の違いで特定箇所の寸法が非常に変わってしまうのだとわかりました。そのほか、金型を固定するピンの摩耗によって寸法が変化した例もあります。どんな条件が作用するのかわかれば、次はその条件を織り込んだ設定や寸法変化を予測した対応ができます。このおかげで生産準備の手戻りが減って、そのための時間や費用のコストも大幅に減りました。

これを応用して、事前に良い状態の金型や治具を測定するプロジェクトも始まっています。基準品と摩耗品の差を測定すれば何をどれくらい修正すればよいかすぐわかるからです。いろんな測定を試しながら新しい管理基準を作って、さらに製品の品質を高めていこうと思います。

すでに測定機を大いに活用されていると思いますが、新機種に順次入れ替えている理由は何ですか。

大岩:大きな理由の一つは、測定時間がさらに半減される点です。最初に導入した際も有接触測定機に比べて劇的に測定時間が速くなりましたが、新機種はソフトとハードの性能向上が相まってさらに時間が半減します。

技術者とのデモでは2時間かかっていた測定が1時間で完了して現場の測定担当者は驚かれました。この時間的メリットだけでもコストを十分上回ると判断して、今後は全拠点で新機種に替えていく予定です。今後は鋳造だけでなく塑性分野でも活用したいと思っています。

サイズもコンパクトになったので工場の狭いスペースに設置できる利点があります。これから5G環境が整っていけば、通信部分はもっと小さくなって取り回ししやすくなるのではないでしょうか。女性も扱う装置なのでとてもありがたい変化です。

また、海外の問題点はすぐ人が辞めてしまうところなのですが、それについてもExcelを活用した自動化ノウハウを教えてもらい、自社でアレンジして自動化プログラムを組むことができました。時間をかけて分析方法を伝えなくても、金型及び素材の基本検査であればクリックするだけでPolyworks作業は自動化するようにしたんです。

弊社で扱う製品数はとても多いので、1つの測定で少しでも手間や時間が短縮できれば全体で非常に大きなコスト削減になります。COMETシリーズは高価な装置ではありますが、確実にそれ以上の効果をもたらす存在です。これからもどんどん活用していきたいと思っています。

アイシン高丘株式会社様

トヨタグループの自動車部品メーカー、アイシングループに属し1960年に設立。自動車部品を主体とする鋳造・機械加工、塑性加工、工作機械の製造だけでなく「TAOC」ブランドで音響製品の製造・販売も行っている。現在国内8社の関連法人のほか、中国・タイ・アメリカなど海外法人でも6ヶ国15社を展開。各国・各地域の拠点が連携し、より高品質な製品造りと地球環境との調和を目指して技術革新を進めている。

http://www.at-takaoka.co.jp/

【この事例で紹介された製品】COMET

※COMETは製造・販売を終了しております。なおサポートは継続しております。詳細については担当営業までお問い合わせください。
また、リンクよりカメラ式非接触3Dスキャナの新商品であるFLAREシリーズのページをご覧ください。

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