その他

ひずみ測定とは、材料や構造物に力が加わった際の変形を数値として測定・評価する技術のことです。製品や構造物の安全性を確保するためには、ひずみ測定が欠かせません。

この記事では、ひずみ測定の基本原理や測定方法、精度向上のポイントを解説します。東京貿易テクノシステムが取り扱う多機能なひずみ測定ソリューション「MatchID」もご紹介しているので、ぜひご覧ください。

ひずみ測定とは?

ひずみ測定とは、材料や構造物に力が加わった際の変形を数値として測定・評価する技術のことです。ここでは、ひずみ測定の理解を深めるために、ひずみの定義や重要性、測定方法を解説します。

ひずみの定義

ひずみとは、物体に力が加わった際の変形量を元の長さで割った比率のことです。この比率は、単位のない無次元量として表されます。

例えば、長さ10センチメートルの輪ゴムを15センチメートルまで引き伸ばした場合の変形量は5センチメートルです。輪ゴムの変形量5センチメートルを、元の長さの10センチメートルで割った0.5(50%)がひずみです。

ひずみには「垂直ひずみ」と「せん断ひずみ」があります。垂直ひずみとは、物体を引っ張ったり押したりした際の変形を元の長さで割った比率のことです。先述した輪ゴムの例が垂直ひずみに当たります。せん断ひずみは、物体を横方向にずらした際に生じる傾きの角度から求められる変形の程度を表す値のことを指します。ハサミで紙を切るときに生じる、上下にずれる変形が、せん断ひずみの代表例です。

物体の長さが変わる変形の場合は垂直ひずみ、形が傾く変形の場合はせん断ひずみを指標として使用します。変形の種類に合わせて適切なひずみの指標を使うことで、物体の変形状態を正確に評価できます。

ひずみ測定が重要な理由

ひずみ測定が重要な理由は、製品や構造物の安全性を確保するためです。ひずみ測定により、材料の微細な変形を数値として正確に把握できるため、製品の破損や事故を未然に防げます。

例えば、航空機の主翼では、応力(物体が力を受けたときに物体内部に発生する単位面積あたりの力)が集中する接合部や荷重が大きくかかる部分にひずみゲージを配置して、飛行中の変形を監視しています。

ひずみゲージは、物体が外力を受けて変形したときに、その変形の度合いを測定するための装置のことです。物体に生じた微細な変形を検出し、設計値と比較することで、金属疲労による破損の予兆を早期に発見できます。

製造現場の品質管理でも、ひずみ測定は重要な役割を果たします。自動車の骨組み部品の荷重試験にひずみゲージを使用することで、金属疲労が蓄積しやすい箇所や、蓄積する金属疲労の程度を測定可能です。
ひずみ測定は、製品の品質管理から構造物の保守点検まで、幅広い分野で活用されています。

ひずみの単位と測定方法の概要

ひずみの単位は、物体の変形を元の長さで割った無次元量です。無次元量とは、物体の大きさに関係なく、変形の程度を比較できる単位のことです。

例えば、長さ100ミリメートルの金属部品が0.1ミリメートル伸びた場合と、長さ1,000ミリメートルの金属部品が1ミリメートル伸びた場合、どちらも変形量を元の長さで割ると0.001となり、同じ変形として評価できます。

ひずみでは微細な変形を表現するために、με(マイクロイプシロン)の単位を使用するのが一般的です。ひずみが0.001の場合は、1,000μεと表現します。なお、ひずみの測定方法は、大きく接触式と非接触式の2種類に分類されます。

ひずみ測定の主な方法

ひずみ測定の方法には、接触式と非接触式があります。

接触式のひずみ測定では、対象物に直接触れて変形を計測するため、高精度の測定が可能です。また、測定の際にほこりや水といった、外部環境の影響を受けにくいという特徴もあります。代表的な接触式の測定方法としてあげられるのは、ひずみゲージです。

一方、非接触式は対象物に触れずに変形を測定できることから、物体へのダメージリスクが低いという特徴があります。なかでも光を利用して変形を計測する光学式測定は、通常の接触センサーでは耐えられない高温環境でも測定ができることに加え、金属や樹脂、ガラスなどさまざまな物体の測定が可能です。

ここでは、ひずみゲージと光学式測定について、詳しくご紹介します。

ひずみゲージ

ひずみゲージは、金属箔(はく)の伸縮による電気抵抗の変化を利用した、接触式の測定方法です。測定したい部分にひずみゲージを取り付け、物体が変化する際の電気抵抗の変化を測定し、変形量を把握します。

例えば、500μεのひずみが発生した場合、ゲージ率(ひずみゲージの感度)2のひずみゲージでは、抵抗値が0.1変化します。120Ω(オメガ)のゲージを使用した場合、この変化量はわずか0.12Ωです。

ひずみゲージでは、このようなわずかな抵抗変化を正確に測定するために、ホイートストンブリッジ(※)という特殊な電気回路を使用します。この回路を通じて物体に電流を流し、ひずみが生じている部分の電気抵抗の変化を電圧の変化として読み取ります。

ひずみゲージで得たデータは、電気信号として処理できるため、リアルタイムでの監視や制御も可能です。そのため、携帯電話の落下試験や金属のプレス加工機械の加圧能力テストなど、時間の経過とともに生じる変形の正確な計測が必要な場面で活用されています。

(※)ホイートストンブリッジとは、小さな電気抵抗の変化を正確に測るための電気回路のことです。

光学式測定(デジタル画像相関法(DIC)など)

光学式測定(Digital Image Correlation)は、デジタルカメラで撮影した画像を解析し、物体の変形やひずみを非接触で測定する技術です。

測定対象物の表面にスペックルパターンというランダムな模様を塗布し、変形前後の画像を比較して、変形量を算出します。光学式測定は非接触測定であるため、対象物を傷つけずに表面全体のひずみを一度に測定できます。

また、金属・樹脂・複合材料・生体組織など、さまざまな材料に適用可能であることに加え、測定精度も高く、肉眼では見えない小さな変化も検出できます。

光学式測定で得たデータは、全視野測定が可能であるため、コンピューターを使用した仮想実験と簡単に比較できます。光学式測定は、従来では困難であった変形の測定や、複雑な形状を持つ部品の評価に効果を発揮する高度な測定方法です。

その他の非接触測定技術

光学式測定以外にも、以下の非接触測定技術があります。

  • 光ファイバーセンサー(光伝送型)
  • 超音波測定
  • レーザー干渉計

光伝送型の光ファイバーセンサーは、光の特性を利用した非接触測定技術です。光ファイバー自体がセンサーとして機能するため、長距離でのひずみ測定が可能です。電気的なノイズの影響を受けにくいため、高圧電線近くでのひずみ測定に適しています。

超音波測定は、超音波を利用した非接触測定技術です。超音波には、物体の内部を透過し、境界線で反射する性質があります。そのため、測定対象を傷つけずに内部状態を測定できます。超音波測定は、物体の厚さ測定や内部欠陥の検査などに用いられるのが一般的です。

レーザー干渉計は、レーザー光の干渉現象を利用してひずみ測定をおこなう装置です。ナノメートル単位の微小な変形を検出できるため、地殻ひずみ(※)の高精度検出に使用されています。

(※)地殻ひずみとは、地震予知の研究において重要視されている地殻内の変形の程度や様子のことです。

参考:ひずみ図とは?|国土交通省国土地理院

ひずみ測定の活用事例

ひずみ測定は、製造業からインフラ点検まで、幅広い分野で活用されています。特に画像計測によるデジタル画像相関法(DIC)は、従来のひずみゲージを利用した計測では困難であった測定を可能にする画期的な技術です。この章では、ひずみ測定の活用事例についてご紹介します。

製造業におけるひずみ測定

製造業においてデジタル画像相関法は、精密機器の品質管理と製品開発の両面で革新的な計測技術として活用されています。

例えば、自動車のエアバッグカバーの開発では、デジタル画像相関法を用いてエアバッグ展開時の変形とひずみを解析することで、設計どおりの作動を確認し裂け目の位置やピークのひずみ値を正確に測定します。

また、飛行機の貨物室爆発試験では、爆発時の機体の変形を高精度に解析し構造上の弱点の発見に貢献しています。ひずみ測定は、自動車・航空機・電気機器など、幅広い産業分野において、製品の安全性確保や性能向上に欠かせない技術です。

研究開発分野での活用

デジタル画像相関法は研究開発分野でも、材料特性の評価や新製品開発における測定技術として活用されています。

デジタル画像相関法を用いると、接着剤のせん断ひずみの局所的な測定が可能です。木材の接着接合部の研究では、接着部分に生じるひずみの計測にデジタル画像相関法が採用されています。負荷によって生じる変形の様子を詳細に把握できることから、より信頼性の高い商品の開発につながっています。(※1)

参考:Digital image correlation measuring shear strain distribution on wood/adheaive interphase modified by sealants|BioResources(※1)  

インフラや建築業界でのモニタリング

デジタル画像相関法はインフラや建築業界でも、構造物の健全性評価の計測技術として活用されています。

ポーランドの二エポレットにある鉄道橋では、デジタル画像相関法を活用し列車通過時の橋りょうに生じるひずみの特徴を測定しています。この実験により、橋りょうの状態をより正確に評価できるようになりました。(※1)

実際の作業に当たる前に遠隔で対象物のデータを取得することで、作業の効率化やコストの削減につながることが期待されています。

参考:Monitoring of civil engineering structures using Digital Image Correlation technique|EPJ Web Conferences(※1)

ひずみ測定をおこなう際の注意点

この章では、計測誤差の原因および対策・温度変化などの環境影響への配慮・データ解析の最適化を解説します。

計測誤差の原因と対策

ひずみ測定をおこなう際は、計測誤差に注意が必要です。特に、ひずみゲージでの測定では、ゲージの貼付状態が数値に影響します。ゲージの貼付方向に注意が必要ですし、接着剤の状態が悪かったりすると、測定誤差が生じます。

測定誤差を軽減するために効果的な施策は、非接触式のデジタル画像相関法を用いることです。デジタル画像相関法を用いれば、貼付に起因する測定誤差を予防できます。

温度補償や環境影響の考慮

ひずみ測定をおこなう際は、温度変化や測定環境など外的要因の影響にも注意が必要です。材料は温度によって膨張・収縮するため、温度変化が測定値に影響を与える可能性があります。

例えば、鉄の場合、1度の温度変化で1メートルあたり約11μεもの伸びが生じます。温度変化による測定値への影響を抑えるためには、自己温度補償型のひずみゲージを使用するのが有効です。自己温度補償型のひずみゲージとは、温度変化による測定誤差を自動的に補正できる特殊なゲージで、測定対象物の材質に合わせて最適な測定器を選択することが大切です。

また、デジタル画像相関法による光学式測定では、照明や振動などの外部環境が測定精度に影響を与えます。暗すぎたり明るすぎたりする照明は、画像のコントラストに影響を与えるため、解析精度の低下につながります。

床から生じる振動も測定精度に影響を与える要因です。外部環境による測定値への影響を抑えるためには、低周波振動を除去する防振台の導入や、適切な照明条件を維持するのが有効です。

データ解析の最適化

ひずみ測定をおこなう際は、データ解析の精度を高めることも重要です。デジタル画像相関法による測定では、デジタルカメラで撮影した連続画像から測定対象の表面全体の変形データを取得します。

取得したデータを専用ソフトウェアで解析すれば、対象物に生じているひずみの強度や状態を可視化できます。例えば、ひずみが集中している部分の特定や時間経過による変形の進行状況などの評価も可能です。

デジタル画像相関法と専用ソフトウェアを組み合わせることで、測定対象に起こった変形の詳細をより正確に把握できます。

東京貿易テクノシステムのひずみ測定ソリューション「MatchID」のご紹介

東京貿易テクノシステムがお届けするMatchIDは、デジタル画像相関法を用いた測定ソリューションです。MatchIDは、測定対象全体の変形状態をより正確に把握することができます。

MarchIDを活用することで、高解像度カメラで撮影した連続画像から、測定対象の表面全体の変形データを取得し、応力分布への変換も可能です。さらに、MarchIDソフトウェア独自の補正機能により、従来では困難であったエッジ部分の解析も実現しました。

豊富な分析機能も搭載しているため、Virtual Fields Methodによる材料特性の同定や、FEメッシュと測定結果の定量的な差分評価が可能です。ハイスピードカメラとの組み合わせによる瞬間的な挙動の計測や、サーモカメラとの熱データ解析にも対応しています。

MatchIDは、高度な材料評価を求めている方や、より詳細な分析を必要とする方におすすめの製品です。詳細は、以下からご覧いただけます。

MatchIDの製品詳細はこちら

まとめ

ひずみ測定は、材料や構造物の安全性を確保するために欠かせない技術です。航空機の主翼や自動車部品の検査など、製品開発から保守点検まで、幅広く活用されています。

ひずみの測定方法には、接触式と非接触式があり、目的に応じて選択することで、より正確な測定が可能になります。

東京貿易テクノシステムのMatchIDは、変形のメカニズムを深く把握できる高度な解析機能を備えているため、信頼性が高いデータを取得でき、詳細な評価が可能です。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

お問合せ

(メールまたはお電話にて回答させていただきます)

(オンライン会議ツールを使って直接お話しいただけます)

PAGE TOP