製造業における歩留まり(ぶどまり)とは、製造工程の生産性を評価する指標のことです。不良品数の低減やコスト削減のために活用されており、企業の利益に直結する重要な役割を担っています。
この記事では、歩留まりの基礎知識や低下する原因、具体的な改善策について詳しく解説します。さらに、歩留まりを向上させる手段のひとつとして、精密測定器の活用法も紹介しているので、参考にしてみてください。
「歩留まり」とはそもそも何か?
製造業における歩留まりの定義や類似する用語との違い、具体的な計算方法について、詳しく解説します。
歩留まりの定義
歩留まりとは、投入した原材料や部品に対して、実際に完成した良品数を示す割合のことです。
良品の割合が高いと歩留まりは向上し、利益の増加につながります。一方で、歩留まりが低いと不良品の占める割合が多いことになるため、利益の減少につながるでしょう。
製造業において歩留まりは、不良品を減らして利益の向上を図るために、欠かせない指標だといえます。
歩留まり率・良品率・不良品率・直行率の違い
製造工程における生産性や品質を評価する指標は、歩留まり以外にもいくつか存在します。それぞれの特徴は以下のとおりです。
指標 | 特徴 |
---|---|
歩留まり率 | 投入した原材料に対して、完成品として得られた製品の割合 |
良品率 | 完成品のなかで、品質基準を満たした製品の占める割合 |
不良品率 | 完成品のなかで、不良品の占める割合 |
直行率 | 製造工程で1度も手直しや再加工をせずに、最初から良品として完成した製品の割合 |
それぞれの指標を生産工程の最適化に活かすためには、違いを正確に理解する必要があります。数値を適切に活用することで、全体のコストダウンや品質管理の効率化につなげられるでしょう。
歩留まり率の計算方法
歩留まり率は、歩留まりを百分率(パーセント)で表したものです。具体的な計算方法は以下のとおりです。
歩留まり率(%)=生産数/投入した原材料数×100 |
一方で、実際の製造現場では、完成品よりも出荷可能な良品の数を重視する傾向にあります。そのため、以下の計算式を利用することが一般的です。
歩留まり率(%)=完成品数/生産数×100 |
例えば、100個の製品を生産して良品が90個できた場合、式に当てはめて計算すると、歩留まり率は90%となります。
また、良品数がわからない場合でも、不良品数から歩留まり率を算出することも可能です。
歩留まり率(%)=(生産数-不良品数)/生産数×100 |
この場合、100個の製品を生産した際に不良品が5個出てしまったとすると、(100-5)で95個が良品となるため、歩留まり率は95%となります。
生産数と良品数または不良品数のいずれかがわかれば、歩留まり率は計算できます。生産効率の向上を目指すために、原材料数、生産数、良品数、不良品数といった、生産ラインの現状を把握しておくことが大切です。
製造業における歩留まりの重要性
製造業における歩留まりは、生産体制のあり方を評価するために重要な役割を担っています。
歩留まりを放置することで生じる主なリスクは、以下のとおりです。
リスク | 解説 |
---|---|
生産効率の低下 | 不良品の発生を放置すると、企業の利益低下につながる |
原材料調達のコスト増加 | 生産数や良品数を一定数確保するために、投入する原材料が増加する |
環境負荷の増加 | 不良品の廃棄コストや保管コストの増加につながる |
歩留まりを管理することは、製造業にとって欠かせない取り組みのひとつです。歩留まり率の低下は、不良品の増加による生産効率の悪化や必要数の納品が間に合わないといった問題を引き起こし、顧客満足度や企業の信用を損ねてしまう可能性があります。企業の利益や製品の品質にも直結するため、なにか問題が発生していないか確認するために、定期的な評価を継続することが大切です。
歩留まり率が低下する原因
歩留まり率の低下には、さまざまな原因が考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ヒューマンエラー
ヒューマンエラーは、歩留まり率の低下をまねく原因としてよく挙げられます。ヒューマンエラーが起こる要因として、以下の3点が考えられます。
- 作業の難易度が高い、または作業者の技術レベルが低い
- マニュアルが整っていない
- うっかりミス(イージーミス)
機械が正確に作動していても、操作する作業者にミスがあると、不良品が発生します。不良品が増えると歩留まり率は低下するため、具体的な予防策が必要です。作業者の技術レベルをあげる教育やマニュアルの整備、うっかりミスを防ぐシステム的な対応といった、ミスを防ぐ仕組みを構築することが大切です。
設備の老朽化や不具合
設備の老朽化は、予期せぬトラブルの原因となり、歩留まり率の低下を引き起こす恐れがあります。さらに、メンテナンス不足や不具合を放置していると、製品の品質に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
また、製造条件の変更により、機械に過剰な負荷がかかる場合も同様です。このような問題を防ぐために、定期的な保守点検や計画的な設備更新を行う必要があります。
材料の品質不良
仕入れた材料に不純物が混ざっているなど、材料に品質不良があると、生産ラインに問題がなくても歩留まり低下につながります。
この場合、製造を開始する前の段階で対策を取らないと、不良品の発生は避けられません。歩留まりの低下を抑制するためには、材料の仕入れ先の選定や、仕入れた材料の品質を精査する品質管理システムの導入が効果的です。
材料の品質管理を徹底することで、安定的な生産が行えるようになるでしょう。
製造プロセスの設計や管理の問題
製造工程の計画段階や管理システムに問題があると、歩留まり率の低下につながります。
製品を設計する際には、原材料や製造ラインの性能、作業性などを考慮した歩留まりの見積もりも必要です。しかし、量産する段階で初めて設計上の課題が明らかになり、想定以上に歩留まりが低下するケースもあります。
現場の実状が把握できていないまま製造プロセスを組んでしまうと、想定外のトラブルが起こりかねません。あらかじめ徹底的な検証をしたうえで、工程の設計や管理システムの構築を行うことが大切です。
歩留まりを改善するには?
歩留まりを改善するには、効果的な施策を取ることが大切です。こちらでは、代表的な方法を6つ紹介します。
5M+1Eの視点で要因を明確にする
「5M+1E」とは、製造業で用いられる、問題特定を行うフレームワークのひとつです。製品不良の主な原因となる、以下6つの要素を表しています。
- 人(Man)
- 機械・設備(Machine)
- 方法(Method)
- 原料、材料(Material)
- 測定、検査(Measurement)
- 環境(Environment)
問題が発生したときに、各要素ごとに問題点を抽出することで、幅広い視野で原因分析を行えます。また、問題点の深堀りをして改善策を講じることで、品質向上の効果が期待できるでしょう。
データ収集とリアルタイム測定を行う
歩留まりの改善には、不良の原因となったデータの収集・分析を行い、課題を抽出することが大切です。製造工程ごとにデータを収集することで、不良が発生した箇所の特定や、原因分析などが行えます。
さらに、リアルタイム測定を導入すれば、異常を即座に検知できるため、迅速な対応が可能です。これにより、不良品の発生を抑え、歩留まり率の改善を目指せるでしょう。
作業者のスキルアップ
歩留まりの改善において、作業者のスキルアップは有効な手段です。作業者一人ひとりのスキルアップは、職場全体の知識や技術力の底上げにつながり、歩留まりの向上が期待できるでしょう。
外部研修への参加や資格取得などはスキルアップに効果的ですが、コストがかかるというデメリットもあります。しかし、工夫次第で費用を抑えながら作業者のスキルアップを図ることは可能です。具体的な施策としては、マニュアルの要点を解説する勉強会や、トラブルが発生しやすいポイントの周知などが挙げられます。
まずは社内で行える取り組みをていねいに実施し、作業者のスキルアップを図ることが大切です。
設備の更新や最適化を図る
設備の不具合は、歩留まりの低下をまねいてしまう大きな要因のひとつです。設備が正常な状態で稼働できるよう、メンテナンスや更新周期の最適化を図ることで、歩留まりの低下を防げます。
さらに、生産効率や品質の向上を図る際には、設備を更新することも有効な手段です。製品に合わせた設備を導入することで生産プロセス全体が最適化され、歩留まりの改善につながります。
会社全体でTPM活動を推進する
TPM活動(Total Productive Maintenance)とは、生産システムの効率化を追及し、あらゆるロスの削減に向けて企業主導で施策を行う、生産保全活動のことです。会社が主体となってTPM活動を推進できれば、歩留まり率の根本的な改善にもつながります。
実行する際には目標とする歩留まり率や生産状況を共有して、組織で活動を進めます。部門担当者任せにせずに、設計や開発、製造などすべての部門が連携して、会社全体で廃棄ゼロの生産体制を目指すことが大切です。
TPM活動に取り組むことで、短期的な改善だけでなく、長期的にも高い費用対効果を期待できるでしょう。
目標を設定して振り返る
歩留まりの改善のためには、達成すべき具体的な目標を設定して、定期的に進捗状況を振り返る必要があります。目的設定から振り返りまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 具体的な目標設定
・「5M+1E」を活用して問題点を特定する
・改善に向けて実現可能な目標を段階的に設定する - 計画の策定
・目標達成に向けた作業者への教育計画や設備更新、製造工程の改善などを行う - 定期的な振り返り
・不良データの収集・分析を行い、改善効果の評価を行う
・設定した目標に対して、進捗状況を定期的に共有する
・達成できていない場合は分析を行い、計画を見直す
目標を達成するためには、現状を把握したうえで、着実にTPM活動を進めることが大切です。目標設定と振り返りを組み合わせた施策を継続できれば、持続的な歩留まりの改善が期待できるでしょう。
精密測定機器を用いた歩留まり改善策
精密測定機器の活用は、歩留まりの改善に有効な手段です。ここでは、具体的な施策について解説します。
三次元測定機を活用した歩留まり改善策
三次元測定機を製造工程に導入することで、歩留まりの大幅な改善が期待できます。
歩留まりの低下を防ぐためには、不良品の数を減らすことが重要です。しかし、複雑な形状の部品や精度の高い成形品を製造する場合、わずかな歪みやずれでも不良品の原因となります。三次元測定機であらかじめ部品の形状に不具合がないか確認しておけば、不良品の発生を予防できるでしょう。
人の目では判断が難しい誤差についても正確に見分けられるため、作業員の測定ミスや誤差が原因で発生する不良品の減少にもつながります。
歩留まりと品質の低下にお悩みの場合は、三次元測定機の導入をご検討ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
測定機器による異常検出と再発防止策
品質検査にデジタルデータを取得できる測定機器を活用することで、製品の異常検出とトラブルの再発防止にもつなげられます。
複雑な形状の製品や制度の高い成型品の場合、異常がないか目視で正確に確認することは困難です。しかし、高精度な測定結果を検証すれば、不良品の問題が発生した箇所を見える化できます。さらに、分析結果から不具合の傾向を把握して、再発防止策を立案することも可能です。
デジタル技術を利用して製造工程の最適化を行えば、歩留まりの抜本的な改善にもつながるでしょう。
まとめ
製造業において、歩留まりの低下は利益率に直結する重要な課題です。
歩留まりの低下を予防するには、問題点の特定と効果的な改善策の実施が求められます。三次元測定機は高精度かつ迅速に成形品のデジタルデータを作成できるため、異常の早期発見やトラブルの再発防止に役立てられるでしょう。
東京貿易テクノシステムでは、さまざまなモノづくりの場面で役立つ、高精度な三次元測定機をご提供しています。三次元測定機に関するご相談は、東京貿易テクノシステムまでお寄せください。
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