正しい測定方法で正確な測定値を取得することは、ものづくりにおいて重要な部分です。そのため、業務内容や環境に合った測定機器選びも大切となります。
ここでは、測定器とは何か、また測定機器の種類や選び方を詳しく解説していきます。
測定器とは
「測定器」とは手に持って対象の温度、長さ、重さなどを測定する機器のことを指します。ノギス、マイクロメーター、温度計などさまざまあります。
レーザーを利用して形状や大きさを計測するレーザートラッカー、空気中のガスを検知するガス検知器など、デジタルの測定器もあります。
「測定機」との違いとは
測定をおこなう装置には、「測定器」と表記するものと「測定機」と表記するものがあります。測定器は、測定をおこなうために単独、または1台以上の補助装置と併せて用いる装置のことです。測定機は、そのなかでも主に機械的運動を用いて測定するものの表記に使われます。
測定機はモーターなど駆動部を備えた装置を指し、それ以外を測定器と覚えるとよいでしょう。
「測定」と「計測」の違いとは
測定と計測はどちらも英語では「measurement」と表現されますが、日本の工業業界では使い分けされています。測定がある量をそれと同じ種類の量の測定単位と比較しその量の値を得るプロセスと定義されているのに対して、計測は「特定の目的をもって測定の方法及び手段を考究し、実施し、その結果を用いて所期の目的を達成させること」と日本産業規格JIS Z 8103で定義されています。
引用元:日本産業標準調査会
測定が値を出すところまでに対して、計測は測定の手段を考えるところから出た結果から目的を果たすところまでを指します。
測定機器の種類
製造現場で使われる代表的な測定機器を3つご紹介します。
ノギス
ノギスは、ものの太さや長さを測る測定器です。本尺に外径を測る外側用ジョウと内径を測る内側用ジョウを備えていて、スライドして測定できる構造です。本尺目盛りとスライダーにあるバーニア目盛りを組み合わせると、より細かい値で測定できます。
ノギスは1本で4つの役割を果たします。各測定内容をご紹介します。
- 外側測定…2つの外側用ジョウで対象物をはさんで測定します。外径や厚みを測定できます。
- 内側測定…2つの内側用ジョウを対象物に差し込んで測定します。パイプの内径を測定できます。
- 段差測定…ノギスの本尺端とスライダ端の段差測定面を使っておこないます。
- 深さ測定…本尺端にあるデプスバーを使用します。
マイクロメーター
マイクロメーターは、測定物をはさんで厚みや外径を測る測定器です。標準モデルでは1μmまで測定が可能です。
アッべの原理(精密測定の法則)に基づくマイクロメーターは、同じく外径の測定に使用されるノギスよりも精度が高く、フィルムなど薄い対象物の測定に適しています。
円筒形の測定面が向かい合って測定物をはさむ外側マイクロメーターには、用途に応じてさまざまな種類があります。内径を測る内側マイクロメーター、深さを測るデプスマイクロメータなどです。その他にも、歯車やパイプの管厚など、特定の対象物に特化したマイクロメーターがあります。
三次元測定機
三次元測定機は、空間中の三次元座標(X,Y,Z)を測定し、対象物の形状や位置を把握するための装置です。大きく分けて、プローブなどを当てて三次元座標を測る接触式と、レーザー光を当て反射した光から測定する非接触式の2種類があります。
東京貿易テクノシステムで取り扱っている三次元測定機は以下のページでご紹介しています。ぜひご覧ください。
三次元測定機の一つ、レーザートラッカーは、球体アクセサリのリフレクタに向けてレーザー光を照射し、光が反射して発光源に戻ることで三次元座標を測定します。マニュアル計測だけでなく自動化にも対応しており、幅広い使用用途に対応可能です。
業務に合う測定機器の選び方
製造などさまざまな現場で欠かせない測定機器。製品の長さを測るのであれば、ノギス、マイクロメーター、三次元測定機のほか、たくさんの測定機器が候補として挙げられます。数多くの測定器のなかから何をどのように選べばよいのか、業務に合う測定機器の選び方をチェックしていきましょう。
測定の目的に合わせて選ぶ
測定機器を選ぶ際は、まず測定の目的を洗い出していきます。製品の形や大きさを測定するのか、不良発生によるゆがみや隙間を測定するのかなどを明確にしておきましょう。
目的を明確にしたら次の項目も確認しておきましょう。
- 対象物に合った測定機器を選ぶ
対象物が正方形などシンプルな形状であれば問題ありませんが、多角形のように複雑な形状をしている場合は、画像や光学式などの非接触の測定機が必要になります。
やわらかい材質の対象物も同様です。ノギスやマイクロメーターのようにはさんで測定する機器では変形してしまい、寸法が正確に測れません。やわらかい材質には非接触の測定機が適しています。
非接触の測定機にも測定できない対象物があります。光を透過する素材は測定機の光を反射しないため、表面に手を加えるなどの工夫が必要です。
このように、測定機器には不向きな素材の条件があります。測定したい対象物に合う測定機器は何か、対象物の特徴と照らし合わせて選びましょう。
- 求める精度の測定機器を選ぶ
求める精度で測定できるかは、測定機器を選ぶときの重要なポイントです。測定機器によって測定値の単位だけでなく測定範囲も異なるので、必ずチェックしておきましょう。目盛りの単位ごとの測定機器の一例をご紹介します。
●1mm・・・スケール、巻き尺
●0.1mm・・・ノギス
●0.01mm・・・マイクロメーター、ダイヤルゲージ
●0.001mm・・・マイクロメーター
測定をおこなう環境に合わせて選ぶ
測定機器を使用する環境もさまざまです。例えば三次元測定機には、据え置きして使う大型のものから、持ち運びも操作性にも優れたハンディタイプのものまであります。測定をおこなう環境が屋外なのか工場内なのか、大きな測定機を持ち込んで設置するスペースはあるのかなど、測定環境によって適した測定機は異なります。
また、物質は熱の影響を受けて体積が変化します。測定対象物自体のサイズが小さく、温度や湿度変化による影響を受けやすい場合は、一定温度と湿度を保った測定室などに測定機を設置するのがよいでしょう。
測定機器によっては環境要因を自ら補正する機能を備えた製品もあります。変化のある環境下での使用が必須であれば、環境センサーを備えた測定機器を検討しましょう。
その他にも、測定環境ごとに気を付けておきたいポイントを挙げていきます。
- 製造現場
製造現場で測定機器を使用するとき気になるのが、小さなゴミや設置スペースです。測定機器は精密であり故障のリスクもあるため、製造現場で使う薬品や加工で出る小さいゴミに注意する必要があります。また、測定にどの程度スペースがとれるかによって、測定機器のサイズや測定方法の検討が必要となります。
- 測定室
測定機器や測定対象物に合わせた環境を整えられる測定室であれば、精度の高い測定が可能です。0.01mm単位の測定ができるマイクロメーターの使用や、サブミクロン単位の計測も可能になります。
素材によって熱膨張の割合は異なりますが、測定対象物に限らず測定機器でも起こります。国際標準化機構は測定時の標準温度を20度に定めています。別の部屋から測定機器を持ち込むときは、しばらく測定室に機器をおいて温度に慣らすようにしましょう。
測定の効率で選ぶ
測定機器は、測定の効率面において手動のものと自動のものに分けられます。なかには手動と自動のメリットを兼ね備えた製品もあります。
- 手動で使用する測定機器
手動での測定は、機器のトラブルによって測定不能の状態が起こりにくいのがメリットです。ただし人の手でおこなうので、熟練度によって結果に差が生じます。したがって、手動による測定は、必ず複数回おこなって平均値を求める必要があります。
また、使いこなすにはある程度の技術が必要な機器もあり、人材育成に時間がかかることもあります。
- 自動の測定機器
測定頻度が高い場合は、自動で測定できる機器を用いると効率的です。また、全工程が自動であれば作業者による結果の差がなく、一定条件の数値が常に得られます。さらに測定スピードも速くなります。
機器の導入が手動よりもコストが高くなってしまう場合があるため、頻度と価格、取得できるデータの正確性などでバランスを考えるとよいでしょう。ただ、技術者の教育や誤差の確認コストを鑑みると、自動化できる機器を導入したほうがコストを抑えられることもあります。
また測定機器は定期的なメンテナンスをおこなって正しく測定できているか確認しなければなりません。メンテナンス費用が高額な場合もあるため、どれだけコストがかかるかも確認しておきましょう。
測定機器をお探しの際は、マニュアル計測も自動計測も対応可能な東京貿易テクノシステムのレーザートラッカーの導入をぜひご検討ください。
■LeicaレーザートラッカーAT960
まとめ
ものづくりに欠かせない測定器。多種多様な環境でさまざまな種類の測定機器が使われています。消費者の要求を満たす製品の一定品質を保つためには、同一基準で測定をおこなわねばなりません。
適切な測定機器の導入は、製品の品質面のメリットだけでなく、人件費削減や時間の短縮、コスト削減など、製造現場にあらゆるメリットをもたらします。測定や測定機器に関する知識を現場で共有し、正しい測定を実現しましょう。