人員不足の解消や長期的に見るコストダウンなどさまざまな課題を解決するスマートファクトリー。反面、導入には膨大な時間とコストがかかり、ハードルが高いというデメリットがあります。
この記事ではそんなスマートファクトリーとはなにか、導入への具体的な手順などをご紹介します。
スマートファクトリーとは？
スマートファクトリーとは、IoT（Internet of Things）やAI（Artificial Intelligence）を取り入れることで機械や製造管理システムがネットワークでつながり最適化された工場のことです。工場内作業をロボットに任せて自動化するなど、システムの自律化を目標にしています。
デジタルツインやシミュレーションとの違い
デジタルツイン（Digital Twin）は、現実世界（フィジカル空間）で得たモノや環境などの膨大なデータをIoTを利用して収集し、仮想空間（サイバー空間）に移管する技術のことです。現実と対になるデジタル空間で仮説を立て、モニタリングをおこないます。
一方、シミュレーションとは、対象物そのものでの実験が難しい場合に、対象物に近しいモデルや環境を用意して実証実験をおこなうことです。
デジタルツインやシミュレーションは現実世界で新しい技術や仕組みを活用するための検証の技術であり、スマートファクトリーはそのデジタルツインやシミュレーションの検証結果をもとに現実世界で最適化された工場を指しているといえます。
インダストリー4.0とは
インダストリー4.0とは、ドイツが進めている国家プロジェクトのことです。和訳すると「第四次産業革命」となり、製造業にITを取り入れて活用することを目指しています。その中心にあるのがスマートファクトリーをはじめとしたエコシステムの構築です。
これが実現すると、人・モノ・システムが相互に通信し、各データを管理することで生産効率のアップが見込めます。センサーなどを活用して情報収集が可能となったスマートファクトリーでは、人の手を介さず最適化した生産オペレーションが実現します。
スマートファクトリーが注目されている背景
日本でスマートファクトリーが注目される背景には、いくつかの理由があります。
大きな理由は、人材の不足です。少子高齢化が進むなか、さまざまな業界で十分な人員確保が難しくなっています。この状況は今後さらに深刻化していくと考えられており、生産性を低下させずに事業を継続するための対策が必要となってきています。また同時に、熟練技術者の高齢化にともない、継承者となる若者の育成も課題となり始めています。
一方、世界各国の技術力向上や市場のグローバル化にともない、人材不足をカバーしながら国際競争力の維持・強化を図る必要も迫られていることも大きな理由です。価格競争に負けないためにも、生産効率を上げてコストを抑えていく必要があります。
こうした課題をクリアする効果的な手段として、スマートファクトリーが注目を集めています。
製造業におけるスマートファクトリー導入のメリット
製造業にスマートファクトリーを導入して得られるメリットを具体的に見ていきましょう。
生産効率の向上
IoT機器やAIを導入しデータ活用することで、生産ラインや設備、作業員、材料の状況などが可視化できます。ネットワークを通じてリアルタイムで情報共有ができ、蓄積した膨大なデータから研究開発につなぐことも可能です。多くのデータと過去の実績を照らし合わせることで実現可能な生産計画を立てやすくなり、機会損失も防げます。
ベテランの属人化解消
製造現場では、ベテランから次世代への技術の継承が課題のひとつですが、スマートファクトリーでは現場の技術をデータ化する、AIに学習させるといった方法で、多くの従業員に共有できる環境を整えます。これにより、若い人材を効率よく育成でき、属人化が解消しやすくなります。
未来予測の実現
スマートファクトリーは、膨大なデータを駆使して未来予測を実現します。AIをもちいることで、工場稼働率や生産性の予測、新しく導入する設備の生産予測などが可能となります。カメラやセンサーを活用してリアルタイムの監視システムを構築すれば故障やトラブルに迅速に対応でき、トラブルの予兆もつかめます。
スマートファクトリー導入のデメリット
多方面でメリットのあるスマートファクトリーですが、ソリューション導入にはデメリットもあります。
まず、AIやIoT機器は古い設備や装置には使用できませんので、設備の入れ替えが必須です。長期的に見れば人員削減などコストに見合う成果は得られますが、環境整備にはかなりのコストがかかるでしょう。
また、短期間で全体のスマート化を一気に進めるのは困難なこともあるため、主要な一部のラインから始めるなど段階的に進める必要があります。全体がスマート化するまでに長い時間がかかってしまうこともあるでしょう。
製造業でデジタル化を進めるうえでの課題
続いて、製造業でデジタル化を進める際に考えられる課題を2つ解説します。
部署や工場間でのデータ統合
デジタル化の実現には、データの統合や業務の一元化が欠かせません。製造に関わる部門がいくつもある場合や部門ごとに使用するシステムが異なる場合、安全で効率のよいネットワークを構築するには時間もコストもかかるでしょう。また、データの統合にともない情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策も講じなければならず、さらなるコストがかかることもあります。
デジタル人材の確保と社内研修
デジタル化の際は、導入から管理運用を担う人材を確保したうえで、導入する現場に運用への理解を求めることが必要となります。場合によっては社内のすべての人が扱えるようになるための研修も必要となり、人件費がアップする場合があります。
スマートファクトリーの導入手順
では、具体的にスマートファクトリーを導入する手順をチェックしていきましょう。
導入の目的を明確にする
スマートファクトリーを実現するために、スタートからゴールまでのロードマップを作成しましょう。なぜ導入をするのか、経営戦略や課題も踏まえたうえで目的を明確にしていきます。コストの削減や生産性の向上、人材不足の解消など、具体的な目的を挙げ、目的の優先順位をつけます。具体的にスマート化する内容や対象、業務範囲、プロセス、レベル、活用しているシステムなどを明確に定義し、場合によっては専門家にアドバイスを求めましょう。
データを収集・蓄積する
目的達成のために必要なデータを収集・蓄積していきます。IoT技術などを活用し、各部門や各工場に散らばったデータを集め、ひとつの管理システムに統合します。
データを分析・予測する
蓄積したデータは、AIを活用して分析をおこない、未来予測に役立てます。例えばコスト削減を目的としているなら、生産管理システムのデータを利用して作業プロセスの状況を踏まえた工数、材料、エネルギー量、予定生産量などを予測することで、コストがかかる原因を特定できます。
データをもとに最適化する
導入後に蓄積したデータをもとに、最適な経営判断をおこなっていきます。データと向き合い、効率的なプロセスを経てゴールに向かえるよう、判断材料となるデータを最大限に活用します。例えばコスト削減を目的にした場合、設備の稼働計画や人間の作業計画を最適化することで工数や材料、エネルギーの効率化が図れます。
スモールスタートで検証する
一度にすべての工程をスマートファクトリーに移行すると、金銭、時間の両コストが大きくかかります。また、導入の過程で自社のシステムに見合わない取り組みがあった場合、ゼロから計画を立て直すことも大きな負担となります。正確な効果検証をおこなうためにも、まずはスモールスタートで取り組み、評価・改善を繰り返しましょう。
スマートファクトリー化の成功のカギは「データ活用」
スマートファクトリー化のためには、データを収集・蓄積する必要があります。しかしデータは多くの場合、業務ごと、工場ごとにバラバラに存在しており、そのままでは活用は困難です。バラバラのデータを一元管理し可視化や自動化をおこなうことが、スマートファクトリー化の成功のカギとなります。
GX（グリーン・トランスフォーメーション）へも対応していく
GX（グリーン・トランスフォーメーション）とは、多くの二酸化炭素を排出する化石燃料をできるだけ使わず、クリーンエネルギーを活用していく変革や活動のことです。現在、世界中の国や企業が、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減に取り組んでいます。
GXの取り組みのひとつであるカーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにしようという取り組みで、日本は2050年に国としての達成を目標としています。しかし、その実現には社会の仕組みそのものが変わる必要があります。
スマートファクトリー化は、このカーボンニュートラルやGXにも関係するものです。企業の排出量削減の可視化は必須ですが、求められているのは自社の排出量にとどまりません。上流（サプライヤー）から下流（顧客や廃棄）まで、バリューチェーンの全体を把握した取り組みが求められており、ここにもデータの活用と可視化が大きく関わってきます。
TTSがスマートファクトリー化をお手伝いします
スムーズにスマートファクトリーを導入するには、ノウハウを持った企業にサポートを相談することが最短の道です。モノづくりの現場に強く、3Dソリューションを扱う東京貿易テクノシステム（TTS）は、現場でおこなわれる測定からデータ活用・管理まで、トータルなスマート化ソリューションをご用意しています。
- 測定自動化
- データー元管理
- データ連携
- データ可視化
- 修正検討時間短縮
- ナレッジベース構築
- AIによる最適工法の提示
- 自動レポーティング
など
TTSの強みは、測定システム及び自動化システムの供給のみならず、そこから得られるデータを活用し、システムインテグレータとして生産性向上を実現するソリューションが提供できる点です。TTSが提供するデータ活用ソリューションにより、工場全体のDXを実現することができます。できる部分からスマート化し、脱属人化を目指しましょう。
TTSではスマートファクトリーを実現する次世代SCADA「Ignition」を提供しています。ライン監視・制御に必要な様々なインターフェイス、コンポーネントを用意しており、ニーズに合ったシステムを短期間・低コストで構築可能です。